経済セミナーの開催

混迷するミャンマー経済の現状について理解を深めるために、ミャンマー研究者とティラワ経済特区で工場を運営されている実務者のお二人をお招きしてオンラインセミナーを開催しました。

日 時:2022年10月27日(木) 14:00~16;00
形 式:オンライン開催(Zoom)

内 容
1「悪化するミャンマー政治経済に希望はあるか?」
講師 政策研究大学院大学教授 工藤年博氏

2「ティラワ工業団地における経営環境の現状と生産体制」
講師 (株)イゲタ金網代表取締役 森 崇倫氏

目次

講演の概要

工藤年博教授

2020年11月の総選挙において、NLD党が大勝した結果、翌2021年2月1日に国軍がクーデターを起こして政権を奪取したが、これに反発した市民のデモ活動が全土に広がった。大義なきクーデターに対して、民主派には、インターネットの自由化と普及による情報へのアクセスの改善、教育水準の向上、外資・外国人の流入というプラス要因があり、他方国軍の治安維持組織の弱体化と準備不足のクーデター、低い士気、脱走兵の出現等予想しなかった事態が出現している。

クーデター以前には、5~6%の経済成長率を記録していたが、2020/2021年度には-18%と激減した。2021/2022年度は3%と見込まれている(世界銀行)。対外貿易は概ねクーデター前の水準に回復しており、2022年8月時点では、クーデター・コロナ前の水準を回復もしくは超えている。しかし、貿易赤字は大きく、外国投資、ODA、海外からの送金、外国人観光客の訪問は大幅に減少しているので、今後とも外貨不足は続くだろう。

国民と民主派が武力による徹底抗戦よりも、選挙を通じた段階的な政治改革の方が実現可能性が高く、犠牲が少なく、結局は近道であると思わなければ、やり直し選挙は成功しない。

森崇倫

(株)イゲタ金網は、ミャンマーのJVパートナーが「信頼できると判断されたこと、自分一人で責任が取れるくらいこの国を好きだと思えるようになったこと、更にミャンマーの魅力的な国民性と親日国家であることで、進出を決めた。

2020年春以降に発生したコロナ禍により、幾多の問題に直面した:度重なる中断、渡航できない、一時期のリモート管理等。工場が完成間近となり、引き渡しのために、2021年1月21日の救援便で渡緬したところ、2週間ホテルに隔離された。後4日で自由になると思われた2月1日の朝、クーデターが発生した。政治的混乱が続く中、幾多の困難が横たわっている。

まず、国としての外貨(US$)が不足している。SEZ内の企業は問題はなかったが、US$での送金に中央銀行の許可がいるなどの理由で、時間がかかり過ぎて、支払いには使えない。外貨不足のため材料の入手を諦めざるを得ない企業が殆どであるが、幸い、IGETA SUNはMMKで材料を調達出来て、MMKで販売できる現地の顧客を探すことができたので、「細々とビジネスを継続している」状態が続いている。

よかったらシェアしてください!
目次
閉じる