今回は家庭や経済的に恵まれない子どもたちを受け入れ、日々の生活や教育、将来の自立を支えている児童養育施設Dream Trainの子どもさんたちの作品をご紹介いたします。キラキラと輝くドリーミィーな作品をどうぞごゆっくりとご覧ください。
【作品と金田名誉教授の講評】
「今回のミャンマーの子どもたちの絵のギャラリーは、特定非営利活動法人ジャパンハートが現地で運営する 児童養育施設Dream Train で共同生活を送る子どもたちの作品を集めています。困難な状況を経て、Dream Train で暮らす子どもたちの絵を描くことに向かう真摯な姿勢と共に豊かな感性というものが、それぞれの作品によくあらわれています。」
NO.1「強い絆」ヤンナインリン(Yan Naing Lin) 男子 13歳

<講評>
最近のヒマラヤの国ネパールで氷河が融けたことによって引き起こされた大洪水は大きな被害を出しましたが、こうした自然災害というものの前には、国境は関係ないといえます。ヒマラヤ山脈はミャンマーの北部まで連なっています。この絵の中に描かれた、イルカの棲む海、草花の育つ大地、そして大空というものが描かれたこの作品につけられた題名「強い絆」というのは、自然界の動植物たちのつながりの大切さを訴えているように思いました。
NO.2「学校の清掃の日」ナーミ―ティー(Nar Mee Ti) 女子 13歳

<講評>
この絵では、黄色い太陽が描かれています。いつも気づくことですが、日本の子どもたちの多くは太陽を赤く描きますが、これは日本的の特徴であり、他の国では、太陽は黄色で描くのが一般的です。日本の学校では、子どもたち自身の手で清掃をすることが当たり前ですが、世界的に見ると、そうではない学校の方が多いかもしれません。子どもたちの絵は、描いた子どもたちの文化的特徴をあらわします。ミャンマーの子どもたちも自分の身の周りの環境をきれいにするということをぜひ続けて欲しいと思います。
NO.3「想像の風景」 チャワ(Kya Wa) 男子 14歳

<講評>
鉛筆で細部までよく描き込まれたモノトーンの作品です。カタツムリや鳥の姿も描かれています。木々など植物の様式化された表現が工夫されています。一見、ミャンマーの典型的な風景のようにも見えますが、題名から、この作品はリアルな風家ではなく、イマジネーションによって生まれたものであることがわかります。彼にとっては、自然豊かな風景というものは、現実には存在しないひとつの理想の風景であるのかもしれません。
NO.4「日本とミャンマーの友情」 メイディズィンモー(May Di Zin Moe) 女子13歳

<講評>
両国の友情の象徴として、合掌するミャンマーの女性とお辞儀をする着物姿の日本の女性が描かれています。遠くには、富士山と鳥居が見えます。ピンクの花は桜でしょうか。に日本から見ると、女性はいつも着物を着ているわけではなく、富士山と桜だけが日本を表すものではありませんが、私たちはミャンマーのことをどれだけ知っているでしょうか。ミャンマーの子どもの日本との友情を願う心を謙虚に受けとめたいと思います。
NO.5「美しい山々の風景」 ライバン(Rai Vang) 女子 11歳

<講評>
山の頂から顔を見せた太陽の光はオレンジ色で描かれています。太陽は多くの場合、黄色で描かれることを指摘しましたが、山の頂から昇太陽でしょうか、それとも、沈む太陽でしょうか。いずれにしても、日中の頭上の眩しい太陽とは異なる微妙な日の光の美しさをオレンジ色で表現しています。全体的にシンプルな作品ですが、青、緑、黄緑、そしてオレンジ色がアクセントになって美しい配色になっています。
NO.6「冬の美しさ」 ジュ―ナンダ―テェッ(Juu Nandar Htet) 女子 10歳

<講評>
日本の国旗とミャンマーの国旗が描かれ、並んだ二人の一人の吹き出しの中には「こにちは」とあいさつの言葉が、日本語で書かれています。頂上に雪の積もった山は、ミャンマー北部の山でしょうか。それとも日本の富士山でしょうか。ミャンマーというとトロピカルな自然を想像しがちですが、北部にはヒマラヤ山脈の東端にあたる雪を抱く山もあります。冬の美しさというタイトルから、ミャンマーの自然の豊かさというともに、日本への思いが感じられます。
NO.7「ミャンマーの伝統的なお祭りを楽しむ日本人の訪問者」 イータンダ―チョー(Ei Thandar Kyaw)女子 12歳

<講評>
お祭りに参加しているミャンマーの女性たちは伝統的な衣装に身を包んでいます。左右の緑の葉とその上に書かれた文字はお祭り会場の看板なのでしょうか。その入り口から祭りに集う人たちへと絵を見る人の視線を導いています。よく見てみると、祭りに参加している人たちの着ているものや動作がひとりひとり異なっていて、集合写真のような絵ではなく、祭りの華やかさが伝わってきます。
NO.8「夢を追いかける子ども」 エ―ミャットゥ―(Aye Myat Thu) 女子 13歳

<講評>
地球の上空を飛ぶジェット機。背景には世界中のさまざまな国のカラフルな旗で埋めつくされています。日本の国旗とミャンマーの国旗が隣り合って描かれているのが象徴的です。この絵を描いた子どもの夢とはなんなのでしょうか。世界中のいろいろな国を自由に旅してみたい、そんな夢なのかも知れません。その夢が実現することを願っています。
NO.9「瞑想する仏陀」 チャッター(Kya Tharr) 男子 16歳

<講評>
緻密な線で丁寧に描かれた鉛筆画です。お寺にある仏像ではなくて、瞑想をしているお釈迦様のお姿を絵の題材にしているところに、ミャンマーの子どもたちの暮らしの中に仏教の教えが息づいていることを感じさせてくれます。この絵の作者のように、静かに題材に取り組み、絵を描くという行為自体が写経のような意味を持っているのではないでしょうか。日本の16歳という年齢を考えたとき、どのくらいの割合が仏教の深い教えに関心があるのか、改めて考えてしまいます。
NO.10「英雄たちへの敬意と称賛」 チャワ(Kya Wa) 男子 14歳

<講評>
伝統的なミャンマー建築の大きな赤い屋根、そしてたなびくミャンマー国旗を前に敬礼する人物の後ろ姿が描かれています。色彩的にその鮮やかな赤と周囲の緑が美しく、国旗の配色を思い起こさせます。左端には高層ビル、そして右端に描かれているのは仏塔であるパゴダの先端のようです。国旗の向こうには雲がたなびく青空にオレンジ系の色で描かれた大きな円は太陽かもしれませんが、日本の国旗のイメージにも重なります。
【児童養育施設Dream Trainのご紹介】
児童養育施設Dream Train(ドリームトレイン)は、特定非営利活動法人ジャパンハートがミャンマーで運営する施設です。2010年の設立以来、ミャンマー各地から、家族と暮らすことが難しい子どもや、貧困などにより教育を受けることが困難な子どもたちを受け入れてきました。これまでの受け入れ人数は403名にのぼり、現在は131名の子どもたちがDream Trainで共同生活を送っています。
Dream Train が目指しているのは、一人ひとりが自分の可能性を知り、「夢を叶える力」を育んでいける場所となることです。そのため、衣食住を提供するだけでなく、さまざまな人との出会いや学び、スポーツ、音楽、アートなどの体験を通して、社会や他者への信頼感、自分自身を信じる力、そして新しいことに挑戦する力を育むことを大切にしています。
さらに2026年7月には、ノンフォーマル初等教育(NFPE)センターを開設しました。国内情勢などの影響により正規の初等教育を修了することができなかった10歳から14歳の子どもたちを対象に、小学校卒業相当の資格取得を目指す学習機会を提供しています。 子どもたちが描く絵にも、それぞれが育ってきた環境や日々の暮らし、好きなもの、将来への思いなど、一人ひとりの個性が表れています。作品とともにDream Trainの子どもたちの感性をお感じいただけましたら幸いです。
【関連リンク】
ジャパンハートホームページ

Dream Train 公式 Instagram
Dream Trainで暮らし、学ぶ子どもたち。

Deam Trainで授業を受ける子どもたち。

通学バスで学校へ向かう子どもたち。

【金田卓也プロフィール】

金田 卓也 (かねだ たくや)
大妻女子大学名誉教授
1955 年栃木県生まれ。
東京藝術大学大学院博士課程修了(学術博士) 専門は多元文化的芸術教育。ネパールを中心に発展途上国における芸術教育についての研究を続けると共にアジアとヨーロッパでさまざまなアート・ワークショ
ッ プを開催し,「キッズゲルニカ国際子ども平和壁画プロジェクト代表」でもある。

