ミャンマー漫歩禄

当協会副会長
高松重信

ミャンマーの山手線

ミャンマーの最大都市ヤンゴンには東京の山手線と同じ環状線があります。この環状線は地元の市民の足として利用されています。
沿線のインセイン駅などの大きな駅で朝市などを立てるために大きな荷物を運ぶ人、それを買いに行く人、会社員、学生、僧侶など、多くの人々がこの環状線を利用していました。

また、この鉄道に乗りますと、ヤンゴン市・庶民の人々のライフスタイルや風景を身近に感じることができます。文字通り地域の生活に密着した鉄道であります。

朝市で商売をするために商品と共に列車に乗ろうとするオジサン

ミャンマーの鉄道の歴史

ミャンマーの鉄道はその全てが国営鉄道であって、その起源は古く英国が1877年(明治10年)ヤンゴンからピーまで鉄道を開設したのが始まりであり、今年で146年の歴史があります。その間、英国の植民地時代の圧政、第二次大戦の戦火を被り、1948年ミャンマーが独立していらいも、幾多もの内紛や内戦に耐え現在に至っています。

ヤンゴンの環状線(サークルライン)

ミャンマー最大の都市ヤンゴン環状線は英国が1877年にピーまで線路を敷設した線路や駅舎などを使用されていますが、戦後1959年5月1日にミャンマー人の手によって完成されています。
駅数は39駅あり、全区間を走行し環状運転するものと、インセイン郡区〜Payat Seiko Gon・ミンガラドン郡区間を区間運行するものがあります。全長は45.9kmの繋がったサークルラインであり、一日の輸送人員は約7万5千人であり1周の所要時間は約3時間です。

西の港の玄関口として、1877年頃に造られた思われる古風なチーミンダイン (Kyi mying daing) 駅の駅舎

ヤンゴン環状線の近況

2020年のコロナウイルス感染及び2021の政変以降、この環状線は一時運行停止の余儀なくされていましたが、現在に至って運行されるようになっています。左回り線区の運行列車数は以前の45本/日から今年2月は5本/日運行になっていましたが、最近は更に増便されています。
以前は機関車牽引の列車も運行されていましたが、現在全ての鉄道車両は駅間距離が短いので、加速・減速に適した日本から譲渡された気動車が使用されている。
来年からは新製された電気式ディーゼル動車(DEMU=Diesel Electric Multiple Unit)が運行されます。

ミャンマーで活躍するRBE(Rail Bus Engine) !! JR東海から譲渡されたキハ40系気動車

ヤンゴン環状線に添乗して

ようやく外国人もこのヤンゴン環状線に乗っても良いとのミャンマー当局のお達しにより、私達はヤンゴン中央駅から期待を抱き最近この環状線に添乗しました。
ヤンゴン駅の正面を入るとチケット売り場らしき所がありましたが、案内してくれました管理局の方から環状線のチケット売り場はここではないと教えられたので、コンコースを左へ曲がり、突き当りの階段を上がり、環状線が発着する6番、7番ホームに階段を下りると、チケット売り場がありました。ここでチケットを買いました。
料金は、ミャンマー人では一周200MMKチャット(12.2円)、外人は300MMK(18.5円)の驚くべき低価格です。バスは確か400MMKに引き上げられたと聞き及んでいます。

パゴダ(仏塔)を模したヤンゴン中央駅。
ペラペラの切符(列車の中で車掌さんがチェックします)

添乗した日本の気動車

添乗車両は、なんと !! JR東海からミャンマーに譲渡されたキハ11-101号機であり、以前は紀勢本線で運行されていました気動車でした。先頭車上部の行先表示盤には「熊野」と書かれ、JRマークもそのままでありました。

添乗したRBE3086号(キハ11-10)
乗務員添乗ドアー付近の名盤(JR東海と平成元年にJR名古屋工場で改造したと表示されていました)

車中

久方ぶりにヤンゴン環状線に添乗しました。確かに乗客は以前に比べて少なく一日たったの5本しか運行されていないのですが、それでも各駅には人々がこの列車をまっていた。市から帰ってくる行商人や荷物を運搬する人、何処かへ出かける人々など、年配者、中年及び若者まで多くの年代別の人達に利用されていました。

列車には警備のために自動小銃を持った鉄道警察官が数人同乗しており、初めは乗客も緊張気味でありましたが、そこはミャンマーの人々の天性か、少し経つと、車中の勇気あるおばさん達が口火を切った井戸端会議が始まり、乗客の皆さんはおばさんに誘発され、わいわいがやがやとなり、添乗のお巡りさんも打ち解けて、和気あいあいの状況が醸し出されました。

車中の乗客方々
反対車線の列車を待つ若い美人客(許可を得て撮影)
駅の食堂
市で買った花を持つ乗客
お坊さんと若い娘さんとのコントラスト
線路の安全柵も物干し竿に早変わり

ヤンゴン環状線の改修・近代化

ヤンゴン環状線が建設されていらい、約60年が過ぎヤンゴン市の発展に伴い人口が急激に増えたので、環状線の輸送量増強及び近代化を図るために2019年から日本とミャンマー(緬国)の協力で改修工事が開始されました。

日本は円借款により信号設備の近代化建設及び新型車両の導入を受け持ち、緬国は軌道改良を役割分担で実施するなど文字通り日・緬合作で来年早々に完成する運びになっています。改修・近代化工事の目標としては速度を2倍、乗客数を3.5倍にする計画です。

この近代化工事により、列車自動停止システム(ATP)やコンピュータによる自動線路構成などが可能となり、格段の安全運行が向上されます。他方、列車の過密ダイヤも可能になります。更に流線型でエアーコンディションを持つの新車両(DEMU)の投入及びロングレールが敷設され、快適性と機動性が大幅に改善されます。
この近代化工事により、ヤンゴン環状線の景色が一変し、人々の足として更なる貢献をすることになると思います。

新設された信号コントロールタワー
新設の信号設備
投入される新車両(三菱商事ニュースリリースから)
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