アニメ風な絵から写実的な風物画、社会の深刻な問題をリアルに表現した絵など8歳とも思えぬ表現力は観る者に感動と大きなメッセージを伝える。どうぞ最後までごゆっくりとご覧ください。
-1024x747.jpg)
-1024x703.jpg)
-1024x715.jpg)
-1024x731.jpg)
-768x1024.jpg)
-728x1024.jpg)
-745x1024.jpg)
-1024x728.jpg)
-1024x754.jpg)
-1024x768.jpg)
-1024x768.jpg)
-1024x700.jpg)
作者紹介

トゥリア・チョウ・ニュン(Thuriya Kyaw Nyunt )

2016年7月4日滋賀県草津市生まれ。男性。ヤンゴン在住。
- 学校:Pin Lone Rose Private High School附属小学校に在学中。
- 特技:絵を描く事、フットボール、ピアノ、空手
- 受賞:2024年12月25日、ミャンマーシティホールでの漫画・絵画コンペティションにて「メリークリスマス」の作品が3位受賞。
- ミャンマー政府の子供週刊誌「Shwe Thwe Journal」に選ばれ、多数掲載されている。
- 好きな食べ物:フライドチキン、韓国のスパイシーな食べ物。
- 家族:両親、本人、弟の四人家族
金田教授講評
これまでも国際児童画展の審査などに関わってきましたが、いつも感じることはこどもたちの絵に現れた社会的・文化的背景の違いと共にそうした違いを超えた共通点というものです。今回の男の子の絵を見ても、描かれている伝統的な建物や「水かけ祭り」の場面からミャンマーの生活の一部をうかがい知ることができます。また、7歳の時に描いた『麻薬の危険性』と題された作品には、そんな幼いこどもたちにとっても社会問題の深刻な現実というものが無縁ではないことに驚かされます。
一方、Manga や Anime という言葉が日本以外の国々でも通じるように、ミャンマーの男の子も描いているアニメ風のキャラクターというのは世界中のこどもたちに共通したイメージといえるでしょう。『私の強いヒーロー』、『私の未来』という題名には将来の社会へチャレンジしていくという強い意志というものが感じられます。
アニメ風な絵から写実的な風景の絵までどの絵も丁寧に仕上げられていますが、最近の日本のこどもたちの絵からこうしたじっくり時間をかけて描くという傾向が失われつつあることと対照的です。なんでも早く終わらせることが最優先される時代の風潮と関連しているのかも知れません。
ミャンマーに限らず、東南アジアのこどもたちのクレヨン画には丁寧に色を重ねて塗るグラテーションの技法をよく見かけますが、この男の子は水彩による表現でもグラテーションをうまく応用しています。ウサギと亀の絵や田園風景を描いた水彩画の樹木の表現を見ると、光の当たった上部をライトグリーンにして、次第に緑を濃くしていくというグラデーションになっています。亀の体も緑のグラデーションで表現されています。そんなところからも技法的なことをいろいろ試しながら絵を描いていることがわかります。
日本のこどもたちの絵に見られる太陽はほとんど赤く表現されているのに対して、10枚中5枚の絵には薄い黄色の太陽が描かれています。この点に関して、欧米であれアジアの国々であれ、こどもたちは昼間の太陽を赤く描くことはほとんどなく、真っ赤な太陽というは日本のこどもたちの絵の特殊性だといえます。眩しい日中の太陽を白に近い黄色い色彩で表現しようとするのはきわめて自然なことであり、なぜ、日本のこどもたちは朝日でも夕日でもない太陽を真っ赤に描くのだろうかと常々疑問に思っていることでもあります。日本の国旗が日の丸だからといって幼児の時から国旗を強く意識しているというわけでもありません。薄い黄色い太陽を描くミャンマーの男の子の描いた飛行機の翼の日の丸の旗を見て、改めてこどもの絵の面白さというものを感じることができました。
金田 卓也 (かねだ たくや) プロフィール

大妻女子大学教授
1955年栃木県生まれ。
東京藝術大学大学院博士課程修了(学術博士) 専門は多元文化的芸術教育。ネパールを中心に発展途上国における芸術教育についての研究を続けると共にアジアとヨーロッパでさまざまなアート・ワークショッ プを開催し,「キッズゲルニカ国際子ども平和壁画プロジェクト代表」でもある。